FF14

この世界のどこかで ①

今日も今日とて、嫁は、クラフターのレベリングで大忙しだ。
本日のクラフタークラスは錬金術師。
レベル50クエストの納品物を作成しながら、微妙な表情を浮かべている。

 

「なんか、嫌な予感がするんだよー」

「嫌な予感って、どんな?」

「ハガレンのエドとアルを彷彿とさせる……アレの感じ……」

 

 

嫁の言わんとしていることはわかる。
錬金術をテーマに置いて、人体錬成、もしくは、魂の再生をしなかったらウソである。

 

「あー……、まあ、錬金術師だもんな。アレをするのは鉄板だよな、うん」

「やっぱりー! そう思う!? うわー、やだなー」

 

 

「ああああっ! やっぱり! もう、なんでみんな生き返らせようとするのぉ!?」

「錬金術だぞ。究極を言えば、それをしたいがための学問だろ?」

「いや……、まあ、そうなんだけど……。そうなんだけど、でもさぁ!」

 

ハイクオリティの製作をこなしながらも、ジタバタする嫁。
クラフターの習い性とでもいうのか、マクロを押す指は止まらない。

 

「でもやだよ! エドとアルのお母さんのときみたいなのは、やだからね!」

 

確かに、あれには救いがなかった。夫は思う。フィクションだと割り切って読んでいたにもかかわらず、心に刺さるものがあった。かたや、どっぷりとあの兄弟に感情移入して読んでいた嫁はというと……。みなまで書かずともお察しいただけるだろう。涙腺のバルブがゆるゆるな嫁は、あのときのような衝撃を警戒しているのだ。

 

 

お決まりの展開を警戒する嫁に、なおもセヴェリアンが畳みかける。
ふらっと倒れそうになってみせたりして、ものすごい演技力だ。さすがギルドマスター。

 

「そ、——— そこまで言われたら、断れないじゃんよ……。もぉーっ!」

 

素材、採ってくるから! と、ちょっと怒り気味で、錬金術師ギルドを後にする。
その様子を横で見ていた夫は、断るつもりだったのかと、そちらのほうに驚きを覚えていた。

 

 

それから、数分後……。
嫁がこしらえたマテリダ付きのバッデッドローズワンドHQが、セヴェリアンの手に渡る。

 

 

「失敗しませんように、失敗しませんように、失敗しませんように……」

 

コントローラーをかたく握りしめ、ぶつぶつと呟く嫁。
まさに念仏である。

 

と、そのとき。背後から、嫁の念仏をさえぎる声が ———、

 

 

ワ・ナージャの妹、ワ・ブリナの登場である。
彼女はセヴェリアンの施術を止めようというのだった。

 

「………ブリナちゃん」

 

 

「それがわかっていてもなお、願わずにはいられないんだよ……ブリナちゃん」

 

そう言う嫁の声は鼻声で、この時点ですでに号泣していた。滂沱の涙である。

 

 

禁忌を犯さんとする者と、それを止めようとする者。
そのどちらにも確たる信念があった。

 

恋人を生き返らせたいと、それだけに望みのすべてを託してきたセヴェリアン。純粋ゆえに冥いその望みを捨て、未来を見て生きていってほしいと、切に願ってきたワ・ブリナ。二人が過ごしてきたのは、そんな5年間だ。両者、この期に及んで引くなどありえない、まさに一触即発といった状況である。

 

「わわっ! 待って、ブリナちゃん! ストンジャはやめて! ここ狭いから! 岩当たっちゃうから!」

 

 

■ 長くなったので、つづく ■

 

 

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