FF14

何はなくとも…?

相も変わらず、ものづくりに勤しんでいる嫁。
全てのクラフター職に手を出し、いずれもレベル40を達成。

 

クラスクエストで納品する製作物が、当然のようにハイクオリティ品を要求されるようになると、そろそろ心許なくなってくるのが…………そう、ギルである。

 

「くそぉ! エオルゼアでも金か! ここでも金が正義なのか!? ジャスティスなのかッ!?」

「うわっ、なに? 大声でどうした!?」

「結局、世の中カネなのかあああぁぁぁ ————!」

「ちょ…、待って! ご近所に聞こえるからやめてくれ〜!」

 

夫の悲痛な訴えに、嫁もはっと我に返る。
しょんぼりした嫁は、先ほどの憤慨に至るまでの経緯を、ぽつぽつと説明しはじめた。

 

嫁がいま使っているギルは、プレイ休止前にコツコツ貯めていたもので、それがもうちょっとで底を突きそうになっていること。ギルを稼ぐには、コンテンツルーレットをするのが効率がいいのはわかっているが、いまはまだ気乗りしないこと。素材はなるべく自分で集めているが、それにも時間的な制限があり、マーケットボードを利用せざるを得ないことなどを夫に訴えた。

 

「なんだ、そんなことか。稼いでくればいいじゃない」

「稼ぐって……どうやって?」

「ふふふ。これをあげよう。フレさん誘って行ってみな」

 

嫁のキャラに、夫はG10の古ぼけた地図を手渡した。

 

 

 

 

「わー! 見て見て! こんじきのナマズオだー!」

「おおー、俺も初めて見た。金ピカだなw」

「ねえ、なんかご利益ありそうじゃない!? 拝んどこ! 何とぞー、金運を何とぞー!」

 

嫁のビギナーズラックが発動したのか、初回からナマズオが登場。
ゴージャスな魚類と大金ゲットの予感に、テンションマックスになった嫁は、あやしい宗教にハマっている人みたいな状態に。ギルのテンパードである。正直おっかない。

 

あんまり業突く張るのもどうかと思うなぁ……と、夫はちょっと引いて見ていたのだが。ここのところの金策であくせくしていた嫁。少しでも気分転換になるのなら、これくらいのはっちゃけは見て見ぬふりでもいいかと、口から出かけていた苦言を飲み込んだのだった。

 

 

「ふおおおおぉぉぉ! マンドラプリンス!? これ、マンドラプリンス!?」

「かな? 俺は行ってないから、よくわからん」

 

続いてのルーレットで出てきたのは、マンドラゴラの巨大版。マンドラプリンスなのかも知れないが、ヤツよりさらに大きいサイズである。さらに雑魚マンドラゴラと、数字を背負ったマンドラーズも登場し、バトルフィールドはてんやわんやの大騒ぎだ。

 

フレさん「マンドラーズは数字の順番通りに倒してね! 番号を間違えると金額が減るから!」

「うああぁ! そうなの!? ごめん、知らなかった!」

 

そんな面白ギミックがあるとはつゆ知らず、何も考えずに一番近いマンドラーズから攻撃していた嫁。フレさんの指摘を受けて、慌てて数字の小さいヤツを探しはじめた。だが、嫁がターゲットするより早く、猛者たちによって次々とマンドラーズが倒されていく。

 

フレさん「ちゃんと順番どおりに倒せたから大丈夫! ドンマイ♪」

「ありがとう〜! 次からはちゃんとする!」

 

フレさんのフォローが身に沁みる。久しぶりのバトルで浮き足立っていた嫁だったが、階層が進むにつれて落ち着きを取り戻し、クリアするころには詠唱バーを見ながら攻撃が避けられるように。スキル回しはイマイチながらも、ミスによる被弾などでメンバーに迷惑をかけることは少なくなっていた。

 

「あー、久しぶりだったから、緊張した! 敵もけっこう硬かったし! 焦った〜!」

「お疲れ〜。死ななかったのは偉かったw」

「いやいや、ヒラさんのお陰ッスよ! 序盤はちょいちょい被弾したもん」

「んで、どうよ? 儲かった?」

「…………ふふ。ふふふふっ! 8万! 8万の黒字ッスよ! ふはははは!」

 

あまりの嬉しさからか、嫁はまるであぶく銭を手にしたチンピラのような笑い方に。ウルダハあたりならば、登場してものの3分くらいで殺されてしまうような小悪党のそれである。リアルでもバーチャルでも、金は人を変えてしまうものだ。嫁も例外ではない ——— というか、貯金が底を突きつつあると気づいてから、すでに性格が変わっていたような気も……。

 

いやいや、考えない、考えない。
夫は恐ろしい考えを頭から追い出すかのように、首を横に振った。

 

「そういや、お礼は言ったの?」

「ん。いま書いてるとこー」

 

手伝ってくれたフレンドさんに感謝の旨のメッセージを送信しながら、嫁がぽつりと呟いた。

 

「ちゃんと戦闘も練習しないとダメね。フレさんの迷惑になっちゃう……」

 

誰に聞かせるでもなく、ごく小さく。
自分にだけ言い聞かせるようなその呟きは、しかし、夫の耳にも確かに届いていた。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です